熊谷達也著『我は景祐』を読む

熊谷達也著『我は景祐』(かげすけ)を読みました。

2018年は、「戊辰戦争150年」という行事が、会津若松市などで行われましたが、これに合わせて著者が、「小説新潮」に連載した初の時代小説。

492ページの大部ですが、戊辰戦争と仙台藩の関連に興味がある方には、一気に読ませるものでしょう。ちょっと会話が現代的な面もありますが。以下、ネタバレあり。


勝者の歴史のみが残り、正義の「官軍」、悪の「賊軍」の勝手な色分けにより、薩長土肥中心の新政府に逆らう、旧勢力としてのみ、位置付けられた、会津ほか東北の諸藩。

会津討伐令を受けながら、「朝敵」とされた、会津藩の救済に奔走、奥羽越列藩同盟を結成から新政府との戦い、敗戦処理の藩内抗争中で、責任を取って28歳で切腹した仙台藩士、実在の「若生文十郎景祐」の目を通して、戊辰戦争を舞台に、歴史の意味を問い直す、本格的な時代小説となっています。

史料を漁っても、日常的な藩主と家来の会話などは、当然、著者の想像ということになりますが、下級武士ながら、藩主にもずけずけモノを言い、信念を曲げない堅物として、景祐が描かれています。

単純な佐幕派ではなく、京都の実情も調査に行き、薩長中心ではなく、広く全国諸藩の意見を国政に反映させる新政府でなければ、という考え。

一方、暗い影を持つ密偵で、ヤクザな面々を含む小部隊を率いて、新政府軍相手にゲリラ戦で貴重な勝利をもたらす、影の人物として「細谷十太夫」を描き、好対照な二人が、やがて連帯しあう様が、非常に気持ちよく描かかれています。

恥ずかしながら、この時期の東北の歴史に疎く、戊辰戦争は、「悲劇の会津藩」しか、思い浮かばなかったのですが、仙台藩も新政府軍と闘うものの、旧式武器でお話にならなかったとか、仙台にやってきた「官軍」を振りかざした新政府軍兵士の狼藉、列藩同盟が、錦の御旗に対応して、皇族の輪王寺宮をたてて「東北朝」を企てた?とか、戊辰戦争前後の内実が分かって、目から鱗でした。それぞれ、諸説はあるようですが。

また、幕末の生き残り策は、薩長だけの専売ではなく、仙台藩でも、海外に渡航した下級武士に、洋式軍隊の訓練をさせていた(間に合わなかったけど)とか、京都に密偵を送り込んで、かなり実情を掴んでいたとか、実にドラマチックです。

まあ、東北・仙台の人以外に、興味を持たれるのかどうかは、分かりませんが、山本八重同様、若生文十郎景祐の生き様も、ドラマや映画に、できそうな感じですね。

それにしても、会津と仙台、仙台と山形(米沢)は、一時は命運と共にした事もあるようなので、もうちょっと、仲良くできるかもしれませんねw

熊谷達也 著  『我は景祐』 
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発行:2019/11/27 出版社:新潮社 紙価格:2750円
ジャンル:歴史 形態:単行本