瀬名秀明著『小説 ブラック・ジャック』を読む

瀬名秀明著『小説 ブラック・ジャック(APeS Novels)』を読みました。

ご存知、手塚治虫の医療漫画『ブラック・ジャック』のノベライズ。

現代の医療技術や時代状況を踏まえて、今ブラック・ジャックが手術をするなら、という5話。

原作同様、医療技術だけでなく、最新のエポックとヒューマンドラマを絡ませて、最後は、ぐっとくるお話になっています。以下多少、ネタバレあり。

全部で5話の構成。「B・J vs AI」は、自律的に高難度の手術もこなす、AI搭載の手術ロボットを開発した外科医が、ブラックジャックに挑戦状を送り、ロボットの手術室にB・Jが現れるが・・・人間と手術ロボットの未来を問いかける。

「命の贈りもの」以前は治療困難だった難病の弟を、冷凍保存から甦らせ、iPS細胞の技術で治癒を目指す研究者。そこには超難度の手術も不可欠・・・B・Jすら諦めていた、その先に。

「ピノコ手術する」テロの絶えない紛争地域で働く「医療関係者」の過酷な現状を描く一方、ピノコとB・Jのつながりを感じさせるエピソードのオーバー・ラップ。

「女将と少年」主人公の消化器外科医に「手塚」登場。病気で悩む母を救うべく、子供からの提案を受け、手術を準備する手塚に、絶体絶命の困難が。

「三人目の幸福」B・Jが探し当てた「仇」の前には、既に「殺し屋」ドクター・キリコが。殺すのか救うのか?生きている、とはどういうことか。何のための医療か。
B・Jの生き様をなぞりながら、医療と生きる意味も問いかける、エンディング・テーマ。

最後の話は、凄く解釈・意見が分かれそうな話で、読者が、誰かと話したくなるエピソードかと思われます。

全体に、医療技術の凄さ、B・Jの神業そのものより、原作同様、人の生き様の方をより抉った、著者としては異色な作品かと思われます。

尚、手塚治虫へのオマージュとして、各話に仕掛けがありますが、それは読んでのお楽しみ。

瀬名秀明 著  『小説 ブラック・ジャック(APeS Novels)』 
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発行:2019/07/16 出版社:誠文堂新光社 紙価格:1620円
ジャンル:SF 形態:単行本