今日の河北春秋の記事から。
リンクだとすぐ読めなくなるので、全文を引用させて頂きます。
いまは、無理でも、助けられた分を、地域や周りの人に返していく、それが絆の輪になる。そういうお話です。
河北春秋
「恩送り」。作家の井上ひさしさんは生前、辞書には載っていないこの言葉を心に大切に秘めていたのかもしれない▼受けた施しや恩を、直接その相手に返すのではなく、自分ができるようになったときに地域や周りの誰かに返す。井上さんと親交のあった、一関市在住の作家及川和男さんが本の後書きに記している
▼井上さんは激務の合間を縫い、通算4回にわたって同市で直接、一般住民の作文指導に当たった。1回につき100人以上の受講生の作文を徹夜で添削し、句読点から語句の使い方まで一つ一つを丁寧に教えた▼講義の途中、井上さんが秘話を明かしたことがある。一関で過ごした中学時代に、書店でどうしても欲しかった辞書を見つけて万引しようとしたところを見つかった
▼店主は、警察行きを覚悟した井上さんを店の裏に連れていき、夕方までまきを割らせた。そして「職人に頼む代金に比べたら辞書代は半分だ」と言い、辞書と半額分の賃金を手渡した。人気作家による無報酬の作文教室は、その「恩送り」だったのではないか▼大震災から1年が経過した。被災地では大勢のボランティアによる活動が続く。いま、直接でなくてもいい。いつか恩を送れる日がきて、それが人と人との新たな絆として紡がれればいい。