本ブログは[PR広告]が含まれています

映画「ハート・ロッカー」を見る


ハート・ロッカー [DVD]

映画「ハート・ロッカー(Hurt Locker)」は、さきごろ第82回米アカデミー賞で、作品、監督、脚本、編集、音響編集、録音賞の6部門を独占し、キャスリン・ビグロー
監督は、初の女性監督として作品、監督の主要部門で受賞しました。

広告を見た時は、イラク戦争における米軍の爆発物処理班の命懸けの日常を描いたもの—いわゆる「戦争映画」と思っていました。

が、もっと深い問いかけが含まれており、それを伝えるための映画的表現の「技」があいまって、受賞につながったと思います。以下ネタバレあり。


映画の冒頭、「戦争は麻薬である」と出てきます。映画を最後まで見終わったとき、その言葉を問い直すことになるでしょう。

そして場面はイラクの現場へ。玩具のようなリモコン式の爆発物処理用の無人小型戦車が、ターゲットに近づいていきます。しかし亀のように、あっけなく、ひっくり返ってしまい、軍曹が素手で信管をはずしに、防護服をつけて歩いていきます。

この瞬間から、ドキュメンタリーのような、ぶれるカメラワークにより、観客も、この軍曹と共に「危険」に近づき、心臓の鼓動が高鳴っていく緊張感を共有します。

あっさりと処理。爆発物処理班で、勇気があって、優秀で部下からも慕われる上官。笑顔で戻りかけますが・・・防護ヘルメットの中は、血で染まります。強力な爆弾の前には、防護服は無力です。

いざ戦争が始まると、文字通り机上の論理の「善悪」とか「正義」とかは関係なく、毎日が殺し合い。体の一部が無くなったり、精神に異常をきたす、それが戦場。

そして自分と仲間の命をどう守るか。同時に、逆に相手を殺すことで戦争に勝つ。ただ、それだけ。

そのことを、破天荒な行動で爆発物を処理していく、自己中気味の二人目の軍曹(ジェレミー・レナー
)と、援護役の二人、(アンソニー・マッキー、ブライアン・ジェラティ)の葛藤の中で描いていきます。

危ない処理を次々こなす主人公ですが、監督の狙い通り、あまり有名でない役者を起用することで、「こいつ、次は死ぬな」と観客に予想させるイメージを作っています。

脚本は、実際に戦場を取材した記者のマーク・ボールが出掛けており、妙にリアルです。特に、見えない所から音も無く狙撃されるシーン。これも爆弾並に恐怖感があります。ビシッと小さい音がしたと思うと、もう隣の兵士が死んでいる。

その他にも、血染めの死体に手をつっこむとか、残虐なシーンがいろいろ出てきます。従ってPG-12。これはテレビゲームではない。なぜ戦うかなど、理由を考えるヒマはなく、人が死に、死なないために殺す。人間らしい感情を持った瞬間、仲間を危険に晒すことになる。

監督の元夫であるジェームズ・キャメロンが「アバター」で描いていないものがここにある。キャスリン・ビグロー監督は、女性ですが、表現に一切、緩みがありません。爆発のシーンもスローと音響を効果的に入れています。

唯一、ラストに近いシーンで戦闘車両の中に、キリンのような小さなマスコットがバックミラーのところに、ぶら下がっています。。これはどうかな。

尚、仙台では、MOVIX利府に加えて、仙台駅東口に移転したチネ・ラヴィータで上映されています。移転して、入場時に席指定できるようなシステムになりました。

席指定の時、「隣の席に人がいてもいいですか?」と言われたので、より真ん中に座ろうと「いいですよ」と言ったのが、運の尽き。

なぜか「胃液臭い」お兄さんが隣で、ぶつぶつ言っていて困りました。これを知っていて、もぎりのお姉さんが念押ししてきた訳ではないでしょうが・・・

ただ、画面から目をそらすこともできないような映画だったので、最後まで我慢しました。もちろん、映画館自体はとてもきれいです。「HurtLocker=行きたくないところ、棺桶という兵隊用語」を映画的表現を駆使して伝えるアカデミー賞にふさわしい映画が見られました。