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映画「ヘルタースケルター」を見る

岡崎京子原作、蜷川実花監督、金子ありさ脚本、沢尻エリカ主演の映画『ヘルタースケルター』を見てきました。

なかなか凄い映画です。狂気の表現が凄いので、精神的に不安定な時は見ない方がいいかもしれません。原作はまだ読んでいないので、単独の映画としてどうかという視点で見ましたが、エリカさんは、りりかを見事に表現していると思います。

「美醜」「若さ」「欲望」にまつわる建前をぶっこわし、業界に全てを売り、弄ばれるのを自覚しながら、体も心も落ちていく全身整形の女。

「ヘルタースケルター」は「しっちゃかめっちゃか」「混沌」という意味のようですね。以下、ネタばれあり。

何かとスキャンダラスな話題の多い、女優の沢尻エリカさんと、主人公「りりか」がシンクロしている部分もあって、本人も感情移入しやすかったのでしょう。陰と陽の演技が迫真ものです。

そして、整形により「きれいなったから、強くなった」りりかは、トップスターの座、金も男も手に入れながら、次第に、無理な移植による整形は後遺症となって、体のあちこちに現れ、精神も蝕んでいく。

醜くなるのでは、若い子にトップの座を奪われるではという不安、その絶叫、そして一瞬老人のようになるりりか。ヤクチュウで、のたうつ様がリアルに凄すぎて、週刊誌にいろいろ憶測を描かれてしまったのでしょう。

「見たいものを、見せてあげる」。観客が見たいのはバストップやエロシーンではなく、エリカいやりりかが醜く、落ちていく様なのか?

しかし、蜷川監督は、そういう期待を見事に裏切って、エロくても、後遺症が出ても、あくまで美しいりりかだけを映し出していきます。

そしてラスト、精神も肉体も落ちていったりりかは、消えていくのか。どっこい、それは見てのお楽しみ。どうやら、このラストは岡崎ファンも納得のようですね。

配役では、桃井かおり(りりかを「作った」事務所の社長)、寺島しのぶ(りりかに心身を翻弄されるマネージャー)と一流どころの脇役陣の存在感も凄い。それに食われなかったエリカさんも立派でしょう。寺島さんは、痛い役なのに、例によってなり切ってます。こういう役を良く受けたなと思いますが、他の女優さんでは無理。

男優は付け足しの感ありですが、窪塚が、明らかにジョニーテップ風の外見で登場し、りりかとHしまくります。友情出演にしては、おいし過ぎるだろう、この野郎wまた、朝日新聞の評があったように、ポエム検事の大森は、狂言回し役なんでしょうが、映画としては必要なの?という気はしました。

最近では、男でも「若さ」「美」が大きな価値と見なされるようですが、女性の比ではないでしょう。強く生きるために整形して、生まれ変わりたいという、欲求と危うさを、蜷川監督特有の「赤」の画面、そしてうるさいまでの音楽で表現しています。

ただ、ストーリーの流れとしては、りりかが窮地になる事をわかっても、マネージャーが、整形の秘密をマスコミに暴露してしまうシーンだけが、ひとつ納得がいきませんでした。さんざんな目に合ってはいても、心身ともにりりかに隷属していた、という流れのはずだったので。一瞬でもりりかを憎んだのか、それとも、りりかを苦しめた、整形外科医を罰したかったのか?

それにしても沢尻エリカさんは、かつての、ややぽっちゃりした体型から、相当絞り上げていますね。ただ、2種類の顔の特殊メーク?や、あまりにくびれが凄すぎるので、CGもあるのではと、疑ってしまいます。

この映画を見たあとでは、あまりに整っている美人を見ると、「いじってるな」と疑ってしまうようになりました。罪な映画でございますな。

それにしても、何かの雑誌で嫌いな女優No.1に堂々ランクインのエリカさんですが、憧れなのか、全身整形が崩れていく様を見たいのか、映画館に女性客が非常に多いのには、びっくりしました。

インタビューの態度などは面白くないエリカさんですが、この映画のキャラ作りだと思えば、あまり腹も立たなくなりました。それぐらい熱演なのは確かです。

仙台では、仙台フォーラム、MOVIX仙台・利府で上映されています。

ちなみに、ビートルズの初期に、同名の曲があるんですね。
Helter Skelter - The Beatles (White Album)Helter Skelter – The Beatles (White Album)