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映画「天地明察」を観る

「おくりびと」でアカデミー賞を取った滝田洋二郎監督の新作ということで、失敗したら腹を切らねばならないと、プロデューサーが思ったかどうかは分りませんが、豪華絢爛な配役陣の、映画「天地明察」を観てきました。

江戸時代の和算(数学)者であり天文学者でもある主人公が、日本各地を歩いて測量したり、長い年月をかけた観測と、驚異的な数学の素養で、苦難の末に、日食・月食を正確に当てる新しくより正確な暦を作りあげると、という一見、映画になりにくい地味なストーリー。

しかし、300年前に、こんな凄い日本人がいて、それを盛り立てる環境があったかと思うと、その史実だけで、やられてしまいます。


そして映画としては、地味な内容に、松竹の総力をあげたかのような配役に驚くばかりです。

主役の江戸時代の天文学・数学者の渋川春海こと安井算哲に岡田准一、妻えんには宮崎あおい、暦づくりを命じる保科正之に松本幸四郎、水戸光圀は中井貴一、孤高の天才数学者関孝和に市川猿之助、敵対する公家には松本染五郎、えんの兄は佐藤隆太等々。

原作は、冲方 丁の同名小説「天地明察」で、実在の人物の話なのですが、映画では、演出で史実とは違う点も断りを入れて、あえてやっています。学者の話で、20年におよぶ天体観測や算術の研究で、時間がひたすら流れるわけですから、演出は必要なところでしょう。

それにしても、インターネットや活版印刷もない時代、しかも鎖国で海外の情報も細々という時代に、おそらく見よう見まねで、観測機器を大工さんが作り、歩数と計算だけで星の位置を割り出したり、世界地図や地球儀を見て地動説を理解していたというも、信じ難いことです。

この映画のテーマとしては、妻の協力の元、何度挫折しても、諦めずに研究を続けた算哲と、それを助ける周りの人々の絆というところですかね。

算哲の実力を知って、素直に感嘆し、認めあう学者や、職人たちが力を合わせていく様は、実際の史実はどうかわかりませんが、なにかホロリとするシーンです。

また、宮崎あおい演じる妻は、いつまでもチャーミングで、時に笑顔、時に叱咤激励で算哲を男にするという、男から見ての理想像を体現しています。一方、主人公の算哲は、少し漫画チックな描かれ方です。

映像にすると面白くないのでしょうが、個人的には、20年におよぶ気の遠くなるような、単調な観測の繰り返しのこそ、本当の意味があると思うのですが、それを映画表現にするのは、少し無理だったかな。

それと、気づいたのですが「御用学者」という立場。現代では、ネガティブに使われる言葉ですが、目先の数値目標とか利益にとらわれるのではなく、10年先、数十年先を見据えて研究を続けさせるには、金力と権力が必要なわけで、徳川の絶対権力と太平な時代は、天才を育み、長期プロジェクトを実行するには、必要な条件だったのかもしれません。

とにかく、じわじわと、明るい気分になっていく映画で、お勧めです。

ちなみに、テロップで、協力:仙台市天文台と出てくるのですが、同台所蔵の「仙台藩天文観測器機」が、江戸時代の観測の精度を知る貴重な資料ということで、重要無形文化財にも指定されたそうです。

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