松崎有理著『5まで数える』を読む

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松崎有理著『5まで数える』を読みました。著者本人によると、ジャンルはホラー短編集で、5作品を収録。。

東北大のリケジョ出身である著者は、科学論文代筆屋『ミクラシリーズ』で、科研費や疑似科学をやんわりと皮肉っていましたが、今回は、ホラーの対象にするほど、きつくなっています。表現はやさしいけど。

5まで数える (単行本) -

さらに、冒頭作の、「たとえわれ命死ぬとも」では、動物愛護(動物実験すると死刑)のために、研究者自ら、実験に命を賭けよという、「近未来」を描く作品となっています。

いつまでも、ミクラシリーズのみちのくの「蛸足大学」の、狭い世界を描くばかりじゃないんだぜ、とばかりに、世界中に舞台に広げ、SFホラー的な展開で、実に面白かったです。松崎先生、おみそれしました。

科学ネタや奇術の説明、数の概念など、中学の理科や数学の先生のネタになりそうな、分かりやすくかつ面白い文章です。さらには、エセ科学や詐欺に騙されないようにする教材になるかも。

随所に出て来る「科学的説明」が、どこまでリアルなのか、また、どこまでおちょっくてるのか、文系人間の私には判断できませんが、理系の方なら「フフン」と鼻をならしながら、楽しめそうな気がします。(根拠はない=さすが文系w)

ホラーといっても、生臭く書いているわけでないので、どなたでも楽しめるでしょう。バイオハザード級。ただ、「砂漠」は、映像化が引っ掛かりそうですが。

表題作である「5まで数える」では、素数の意味とか、「数」の概念とか、素人にも分かりやすかったですが、そのまま信じてもいいんですよねw

著者自身の内容概説は、以下の通り。

1、たとえわれ命死ぬとも(動物実験が禁止されているので、自分の身体で実験するしかないんです)
2、やつはアル・クシガイだ――疑似科学バスターズ(ゾンビは一体も出てきません)
3、バスターズ・ライジング(科学者+奇術師=疑似科学バスターズ。その発足エピソードと、ドーナツ少々)
4、砂漠(手錠でつなぎあわされた7人の凶悪少年犯罪者たちが飛行機事故で砂漠に放り出される)
5、5まで数える(失算症の少年、数学者の幽霊に出会う。モデルとなった数学者は表紙に浮いてます)

1と2、5は雑誌やウエブに発表済みのもの、3と4は書下ろしで、3は2の前日譚となっています。疑似科学バスターズは、シリーズ化する臭いがぷんぷんしますね。
 
尚、筑摩書房の特設サイトでは、オリジナル書評のほか、収録作1篇が、まるまる無料で読めてしまうという、太っ腹展開です。

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