奇遇にも、読み終えた昨日12月10日夜、NHKスペシャルで、「追跡 東大研究不正 ~ゆらぐ科学立国ニッポン~ 」という、当方のような文系トウシロには衝撃的な、業界の方には、「とうとう出たか」的な番組があったので、非常に腑に落ちたところです。
科研費申請を終えたばかりの、真面目な先生方には、ふざけんな、というようなタイトルではありますが、端から「かけんひ」、「論文」、「査読」について、おちょくりつつ、研究者の内なる声を代弁した本です。近未来SFユーモア小説。それで、よろしかったでしょうか、松崎先生?違うか~。
さて、物語は、研究者心理を研究している、北日本にある蛸足大学文学部心理学科の助教、ユーリー小松崎と、リケ女出身の小説家の松崎有理が、架空論文をでっちあげて、論文代書屋トキトーに形を整えさせ、査読のある雑誌に次々に投稿して、査読制度の問題点を探ろうとしていきます。
というのも、「論文警察」なる謎のグループが、20本もの捏造論文を書いてしまった研究者に辱めを与える、という事件があったから。なぜ、そんな事をしてしまうのか。個人ではなく、制度の問題を抉りたい、というわけです。
そして、論文警察とは、いかなるグループなのか・・・ここはSFていすと。
ユーリー小松崎と、松崎有理は、自らの「かけんひ」が続く限り、でっちあげバレバレの論文を、これでもか、と投稿していくのですが・・・
ユーモアに満ちた展開なんですが、現実の方が、モロに本書を上回る展開。ノーベル賞候補になろうかという天才科学者さえ、「かけんひ」の前には、手段を選ばなくなってしまうのが、昨夜のNスペで放送されていました。
著者としては、2012年の段階で、2014年の美人研究者の事件や、今回の不正問題の事を予見していたわけですが、笑い話で済まなくなっている現状が悲しいですね。
さて、本書には、横組で、タイトル通り、架空論文がそのまま、11本も論文形式で出てきますが、これは著者が、2011-2012年に電子雑誌に、それぞれショート・ショートとして発表したものだそうです。理系だけでなく、経済学風、心理学風もあって楽しめます。
その電子書籍が廃刊になったので、論文に加えて、著者の作品にでてくる論文代筆業のトキトーや、論文警察などのキャラも加えて、物語にしたそうです。一見、難しそうな論文ではあっても、素人にも分かる題材で、随所のユーモアが苦笑いを誘います。
個人的には、社会学の准教授で、タイトミニが似合う、黒野クロエを、今後とも登場させ頂きたいですね。これは男性読者全般の強い要望であると、統計にも有意な結果が出ております。
本書は、「かけんひ」申請でお疲れの先生方には、少々、生々しいかもしれませんが、学部生や、およびでない文系の皆さんには、面白く読めるでしょう。
ただし、理系志望の受験生は、絶対に読まない事!合格してからにしなさい。悪いことは言わない。。。