先日、塚本晋也監督、趣里主演の映画、「ほかげ」を見てきました。
戦場は出てきませんが「戦争」を描いた作品で、映像だけで、強くメッセージが伝わる作品でした。
とりわけ、朝ドラとは別人に見える主演の趣里、大きな瞳で荒廃した子供の精神を見事に演じた、子役の塚尾桜雅の演技は、それだけで見る価値があります。
ナレーションも、字幕の説明もなく、およそふつうに暮らしている人間とは、違う生き物ののような表情をした女(趣里)がクローズアップになります。
序盤は説明セリフ無しに、場面が描かれていきますが、すぐに状況は、理解できるでしょう。
女は、 半焼けになった小さな居酒屋で1人暮らしている。体を売ることを斡旋され、戦争の絶望から抗うこともできずにその日を過ごしていた。空襲で家族をなくした子供がいる。 闇市で食べ物を盗んで暮らしていたが、ある日盗みに入った居酒屋の女を目にしてそこに入り浸るようになり…。
戦闘シーンはなく、体を売ってなんとか生きている女、盗みをしながら食いつないでいる子供、それに3-4人の男が出て来るだけ。
女と子供のやりとりにちょっとだけ和みますが、戦争で、こころを病んだ復員兵(河野宏紀)、謎のテキヤ(森山未來)が現れ、終盤は、驚愕のシーンになっていきます。
「戦争で何が起きるのか」、「戦場の戦争が終わっても戦争は終わるわけでなはない」、というメッセージが伝わってきます。
映画の舞台は、第二次世界大戦後の日本ですが、「歴史」ではありません。
今、パレスチナ、ウクライナ他世界各地で戦争があり、なかなか終結に至らないし、終結して、平和が訪れても、その先にも、いつまでも影を落としてしまう。それが戦争。
リセットボタンを押したら元通り、ではない。
塚本監督の作品は、「鉄男」くらいしか見たことがなく、シュールな作品を作る人だと思っていたのですが、最近は、「野火」とかリアルな世界も描ているのですね。
役者としては、「シン・ゴジラ」「シン・仮面ライダー」の博士役ほか、映画・ドラマなどでも、渋い役どころで、時々見かけているのですが、映画の制作費を稼ぐためもあるのでしょうか?
自分でプロデュースして、しっかりと自分の描きたい事を映画にする姿勢は、これからも続けて頂きたいものです。
この作品は、2023年第97回 キネマ旬報ベスト・テン』第3位、趣里さんが主演女優賞、新人男優賞を、8歳の塚尾桜雅君が受賞。
二人とも芸歴は長く演技の底力は、はかりしれないものがあり、今後も楽しみです。
また、「第78回毎日映画コンクール」の日本映画優秀賞となってます。
尚、仙台での上映は、仙台駅東口のチネ・ラヴィータで、本日2月28日の19:15からと、明日2月29日の13:10の2回で終了とのことです。