鈴木由紀子著「ハンサムウーマン 新島八重
」を読みました。
NHK大河ドラマ「八重の桜」のネタ本と思われる新島八重の評伝で、資料が乏しい中、様々な間接資料から、新島八重の生涯を辿っていきます。
ところで、「八重の桜」の視聴率が、いまいちだそうですが、八重役の綾瀬はるかさんが、颯爽と活躍する姿を早くみたいのに、京都での会津藩の話ばかり、というあたりが不満なのでしょうか。
しかし、何故、八重が会津藩のために銃を取るのか、という最初の山を説明するため、そして、八重の後半生に大きく影響を与える兄、山本覚馬についての経緯を省くことはできない、ということが、この評伝を読むと理解できます。
以下ネタバレあり。
とかく、封建的、守旧派とステレオタイプで語られる「佐幕派」の会津藩には、独自の教育システムがあり、さらに砲術指南という山本家の、武家世界で珍しい理系的気風が、山本八重という傑出した女性育んだという事実に驚くばかりです。
戊辰戦争の篭城戦では、討幕軍の不発弾を分解して殿様に説明したというリケジョぶり。また、圧倒的劣勢の中で、相手の指揮官を狙い撃ちしたという、悲しい女スナイパーと看護役としての働き。
そして会津藩が解体された維新後の京都では、盲目の兄を助け(おぶって会議につれていく)、遷都でさびれ、焼け果てた京都の町を、兄が教育、観光で復興させる一助となるという数奇な運命。日本初の英語の観光ガイド本の欧文活字を拾ったり、同志社女子大の前身で、養蚕などを教えたようです。
藩のために生きた後は、国のために生きるため、外国の知識を学ぶわけですが、それには精神を学ぶ必要があると、キリスト教も学ぶようになります。
新島と再婚して、キリスト教の洗礼を受け、仏教の街、京都で差別を受けながら、アメリカ風のレディーファーストの夫婦生活を崩さず、夫と共にミッションスクール設立に奔走、自説を曲げなかった会津女の強さを見せます。
新島が亡き後は、今度は日清戦争の従軍看護婦として、赤十字の博愛の精神から、敵味方区別なく看護と、ナイチンゲールのような働き。最後は国籍関係なく、人のために生きる。これは、キリスト教というより、兄、覚馬から受け継いだ精神でしょう。
とても一冊で収まるようなスケールの女性ではないのですが、直接資料が乏しいことがあって、周辺資料からの論証で、人となりを著者は推論しています。
八重という稀有の人物を通して、教科書的ではない、明治維新の別の側面も垣間見えて、まさに目からウロコの一冊でありました。
「八重の桜」を楽しむ上でも、歴史を見直す上でも、オススメの一冊かと思います。
⇒「ハンサムウーマン 新島八重
」