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在仙小説家「佐伯一麦・佐藤厚志」対談イベントを楽しむ

7月9日、在仙小説家の二人、佐伯一麦、佐藤厚志氏が、仙台文学館で対談をするというので、行ってきました。

会場の小ホールは満員(80名?)の盛況。抽選に当たって良かった。

 

館長になる前から、仙台文学館で、「小説を書いてみるゼミナール」の講師をしている、佐伯氏ですが、その受講生の中に佐藤厚志氏がいたという事です。

修業時代の文章を一部暴露されて、佐藤氏が慌てるという、笑いを誘う場面など、なごやかな雰囲気で、あっという間の1時間半でしたね。

当初から、佐伯氏は、佐藤氏は「書ける人だ」と思っていたそうです。

さて、さすがに「先生慣れ」している佐伯氏なので、このイベント参加者が、知りたそうな事を、どんどん佐藤氏に投げかけたり、小説家の実態を紹介するなど、読書家だけでなく、作家志望の方向けのネタも振って、興味深かったです。

■まずは、『荒地の家族』のディテールや、発想について、佐伯からの質問。

T.S.エリオットの詩『荒地』からの影響を、佐伯氏が盛んに語っていましたが、英文科出身の佐藤氏ですが、特に意識していないと。

タイトルの「荒地」も、亘理の風景と小説の内容で、つけたそうです。

他にもいろいろ語られてましたが、佐藤氏の回答はいろいろ公表されてるし、先入観がつくのアレなので、省きますw

佐伯氏の方が、一番言いたかったのは、「作家というのは無意識のものが表に出て来る」、「言葉にできない、言葉になってないものを表現するのが小説家だ」、というところでしょうか。

■次に、佐伯氏から見た、佐藤厚志氏の作風や特長への質問。まあ、佐藤氏もほどよく受けてました。

私が好きな『象の皮膚』の話も出ましたが、あの本に登場する、書店に来るクレーマーは、かなり実像通りのようです。

編集者に止められて、まだまだストックがあるクレーマーについては書いていないそうですが、あの人間模様は、どっかで使ってほしい。

■最後は、作家生活についての、具体的な話。

佐藤厚志氏の場合は、すべてワープロで作成し、書き出しから書くとか、結末を予め決めるという書き方はせずに、どんどん書いて、再構成するという書き方のようです。

書いているうちに、結末がストーンと落ちてくると。

あと、一日に平均してどれくらい書くか、という話では、だいただい2-3枚とのこと。

勤務している書店のシフトに合わせ、早番では仕事の後、遅番では、出社する前に、喫茶店で書くことが多いとのことで、書けなくても、最低2時間くらいは、ワープロに向かうそうです。

これに付け加えて、佐伯氏から、プロの作家の条件として、一日平均3枚位、年千枚かける事、たとえ書けなくても、机の前とかで執筆時間を必ず作れないとダメ、といいう話が、面白かったですね。

千枚書いて、文芸誌などの原稿料で年収300万円位がベース。それで本になり、売れたら印税がプラスという事。ただし、作家の8割は、年収200万円未満というのが、実情だそうです。

それとデビューした作家には、3作までは面倒見るよ(その間に受賞など結果を出せ)、という事を編集者の方が言うそうですが、2作目が書ける作家が3割、3作目までたどつける作家がまた3割位だそうです。

結局、デビューしても、プロを維持できるのは、1割にも満たないと、佐伯氏。

そういう覚悟を持って小説家を目指しなさいと、という事のようですね。

■対談後に、会場から、「小説家を目指す高校生、大学生へのアドバイス」を求められた佐藤氏は、「執筆以外に、興味のある、得意な仕事を持つこと」という事を言っていました。佐藤氏も、様々な職歴が執筆に役立っているし、生活も成り立たないと、執筆どころでなくなるからでしょうね。

佐伯氏の方からは、作家にとって、無駄になる経験などない、と補足がありました。

純文学を目指す場合は、特にそうなんでしょうね。

■佐藤氏の今後の予定。

河北の連載とは別に、年内に次作を書き上げて、来年始めに出せれば、ということでした。今後は、作家に専念したいような?匂わせ言ってました。

尚、文学館のHPでは、このイベントについてのページは、既に削除されています。改めてアップされるのかな?