松崎有理著『シュレーディンガーの少女』を読む

松崎有理著、『シュレーディンガーの少女』(創元SF文庫)を読みました。

著者の単著としては、3年ぶりとなる、短編集ですが、これまでの作風とは少し違いがあり、SF的要素だけなく、アクションや異世界転生?、パンデミックなどナウなwテーマも盛り込んで、面白く、一気に読めました。

発表済みの5作品に加えて、標題作の書下ろし作品も掲載。

何せ、作者自身が「あとがき」(読後に読むことを推奨)を公開済み、さらに、2作品を東京創元社のWebで無料公開中という、フリーミアム戦法。

なんで、余計な内容説明や、ネタバレは、野暮天の極みとなるので、ちょっとだけ感想を。

作者が、もう公開しているように、6作品のテーマは「ディストピアx少女」。

未来や異世界の、こんな世界は嫌だ、という所で、少女、女性が、その世界に抗ったり、とことん理詰めで迫ったり、時には身を委ねたりと、それぞれに、生き様を見せてくれます。

タイトルからも分かるように、何等かの制約=寿命、究極のダイエット地獄、絶対に数学を使えない、既に無くなったものの再現、そして「運命」などが、主人公たちを阻みます。
 

個人的には、「六十五歳デス」と、「シュレーディンガーの少女」がいいですね。

前者はSFというよりアクション、ミステリー要素が多く、後者は、タイトル通り、量子力学の諸説も入れながら、今の日本の現状とか、理想のAIとかも織り込んだりして、理論の方に今一ついていけない、おいちゃんクラスでも、ワクワクで読めました。

尚、全作に共通するアイコンがあって・・・と書こうとしたころで、何と、著者のプレゼントクイズになっているので、やめておきますw

あるオマージュかな?「あとがき」には書いてないですね。

ちなみに、今回は、電子書籍でKindleで読んだのですが、いつの間にか、古いKindleでも、新しいフォントとか、行間設定もできるようになって、だいぶ自分の好みの字面で、読めるようになりました。

また、もともと「代書屋ミクラ」シリーズなど、読みやすい作品がある著者ですが、今回の本も、ひらがなを増やして、SFの「固さ」の先入観を、払拭しようとされている感じがしました。

Kindleなど、電書で読む場合、術語や長い漢字の単語が多いと、読む速度が落ちて、ストーリーを追うテンポが出ないので、これは今風かと思います。

内容的にも、3年をかけ、満を持しての、著者渾身の作品(帯風)なのは間違いなく、楽しめます!

収録作と初出

  • 「六十五歳デス」東京創元社<Webミステリーズ!> 2020年11月
  • 「太っていたらだめですか?」東京創元社『Genesis 白昼夢通信』 2019年12月(「痩せたくない人は読まないで下さい。」改題)
  • 「異世界数学」東京創元社『Genesis されど星は流れる 2021年10月(「数学ぎらいの女子高生が異世界に来たら危険人物扱いです」改題)
  • 「秋刀魚(さんま)、苦いかしょっぱいか」 ダイヤモンド社『SF思考』 2021年7月
  • 「ペンローズの乙女」 <Web東京創元社マガジン> 2022年5月
  • 「シュレーディンガーの少女」書下ろし

▶️ 『シュレーディンガーの少女』(創元SF文庫)