少し時間がたちましたが、伊坂幸太郎著「火星に住むつもりかい?」を読みました。
時折、伊坂作品に出てくる、権力の横暴、拷問、密告などの「冷たい」ラインが久々に復活した、らしいといえば、らしい小説。
一応解決策は出てきますが、カタルシスやハッピーエンドが目的でなく、昨今のきな臭い状況を風刺した作品と思います。以下、ネタバレあり。
架空の町「仙台」を舞台に、住民相互監視の密告社会を作ることで、作為的に安全な街を作りあげるという、「平和警察」が存在する近未来。
正義は権力側が定義し、疑念を抱く者は、近世の魔女狩りのように、肯定しても否定しても罪をかぶせられ、ギロチンで公開処刑される。発案したのは、某警察幹部。
そこに本部から、ちょっと変わったエリート警察官僚が乗り込んで来るが・・・
最初から展開は読めるのですが、謎解きより、精神的、肉体的に「仕立てた犯罪者」を追い込む様が、まさに伊坂流。
一般人の防衛反応を利用して、密告を行わせ、反対意見を封じ込め、意見を言うこと自体が反逆として罪になる、その罪は権力側が規定する。
少し誇張はありますが、100年前に後戻りしてる、どこかの国の現状を風刺しているようでもあります。