「仙台ぐらし」は、地域誌『仙台学』の1号から10号まで(2005~2010年)の連載エッセイを全面改稿、震災後のエッセイ3本などを加え、震災ボランティアからヒントを得た書き下ろしの短編「ブックモビール a bookmobile」を収録。
したがって、震災前の、仙台での作家稼業のいろいろなシーンがメインの本です。
長期にわたるエッセイ集ですが、著者の人となりが表れていて面白いですね。奥さんと子供ひとりがいるらしいことも分りました。
繰り返し出てくるのが、喫茶店などでパソコンで執筆している自分に、「読者」が声をかけてくれないかな、かと言って、声かけられるのもわずらわしい、それでいて、待っているように見られるのも恥かしい、と中々、面倒な先生の心境です。
仙台に住むファンは、先生をお見かけしたら、さりなげなく「○○読みました。面白かったです。お邪魔でしょうから、さいなら」と、誉めながら、すぐに立ち去ることですね。
「映画化」に関しても、拒んでいるわけでも、映画化を念頭に書いているわけでもないが、積極的に推し進めてると思われるのが、好きでない、というレベルのようですね。
また、震災にショックをうけた様子もエッセイから伝わってきます。最後の短編は、実在の震災ボランティアをモデルにしていますが、震災そのものでなく、ボランティアの人の心境にちょとミステリをからませた、著者らしい発想の物語です。
小説での大胆さとは違って、エッセイでの繊細ぶりがまた興味深いですね。
目次
1/タクシーが多すぎる
2/見知らぬ知人が多すぎるⅠ
3/消えるお店が多すぎる
4/機械まかせが多すぎる
5/ずうずうしい猫が多すぎる
6/見知らぬ知人が多すぎるⅡ
7/心配事が多すぎるⅠ
8/心配事が多すぎるⅡ
9/映画化が多すぎる
10/多すぎる、を振り返る
11/峩々温泉で温泉仙人にあう
12/いずれまた
13/震災のあと
14/震災のこと
15/ブックモビール a bookmobile(書き下ろし)
16/あとがき