熊谷達也氏の新刊「バイバイ・フォギーデイ」を読みました。
近未来というか、ほぼ現代の函館を舞台に、才色兼備、総理大臣を目指す女子高生「岬」と、高校生ギタリストとして、バンド活動に明け暮れる、幼馴染の「オレ」が、高校生にまで与えられた、憲法改正の国民投票権をめぐって、文化祭のミュージカルのテーマを改正論議の関連づけて、日本中を巻き込んでしまおう、というお話。
と書くと、とても固い話のように見えますが、「青春グラフティー」「インターネット・ラテラシイ」「憲法9条」の3本立てのテーマうち、著者お得意の「青春グラフティー」の展開がハラハラさせて、引き込まれてしまいます。
メインテーマの、9条を巡る論点の分り易い解説もいいのですが、インターネット掲示板での攻防とか、舞台の函館の見所解説、そしてなにより、主人公二人の恋?の行方が気になり、どんどんと読み進んでしまいます。
個人的に、函館が好きな街なので、シーンを連想しながら読めるので、贔屓目になるのかもしれませんが、著者のいつもながら澱みない書きぶり、ヤマの作り方は、楽しいですね。
ネット関連の記述も理系出身の著者らしく、きっちり書いてあります。本人も結構やってるな、匿名でwという感じです。
ただ、ラストについては、ちょっと女性陣からは、「ないよ」と言われそうな気もします。が、男からは「驚き」のエンディングですね。それは読んでのお楽しみ。
本書は、「小説現代」2011年2月号~2012年1月号に連載されたものに加筆。
改憲論議の話の中で震災の影響を受けたと思われる部分もあります。