仙台在住小説家、瀬名秀明著の、小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団を読みました。
ある年代以下の人にとって、ドラえもんは国民的アイドルであり、いまや世界各国で翻訳もされて、ワールドワイドな漫画ですよね。
本書は、ドラえもんファンを自称する著者により、原作に対するオマージュとして書かれていると思われますが、ドラえもんを知らない希少な日本人にも楽しめるようになっています。
かくいう、私自身も、ドラえもんで育った世代ではなく、わずかしかテレビアニメも見ていないので、原作との異同や、世界観を語ることはできません。
本書には、そういうひとのために、登場人物の性格や舞台の説明が丁寧にされており、ようやくドラえもんの由来や、家族環境や微妙な性格が分りました。
そういう私が言うのも何ですが、この作品は、「ドラえもん」の持つ奥深さとメッセージを損なうことなく、エンタメの中にも、ロボット関連科学のテーマを散りばめたの作品のように感じました。
1985年に原作が発表され、映画にもなっているので、あらすじを説明するまでもないと思いますが、宇宙からやってきたロボット軍団に対して、ドラえもんやのび太、その友達が、敵の先遣巨大ロボットを改造して味方とし、地球のために戦うという、スケールの大きい話です。
ヒト型ロボット、モビルスーツ型ロボットが出てきて、操縦方法、自律型とか自意識の誕生、鏡面世界など、著者の得意分野のネタが満載ですが、あまりそこ記述は拘泥していません。本筋として、「思いやり」「自己犠牲」といった漫画のテーマが、自然と入ってくるようになっています。
同時に、いかにも機械風のロボットなら「破壊」できるが、ヒト型なら「殺す」にしのびない、という、著者がよく言及するテーマも、分りやすく提示されてきます。
読み物として、50ページを過ぎるあたりから、アクション映画を見るようなドライブ感で、引き込んでくれるので、難解といわれる著者の作品を読みこなしている方には、逆に不満かもしれませんが、私としては、初めて一気に読めた瀬名作品でした。
また、注釈ではなく、ルビが豊富につけられていて、ドラえもんを知らない年寄りから、SFに興味があるませた小学生でも、チャレンジできるようになっています。分らない言葉は辞書を引きましょう。
ドラえもん世代の方なら、350ページ(ゆったりとレイアウトしてあります)を一気に読んで、いろいろとイメージを膨らませることもできるでしょう。仲間との会話のネタ本としても使えますね。
尚、この本は3月5日から公開となるアニメ映画「ドラえもん 新のび太と鉄人兵団~はばたけ 天使たち~」に関連した企画であるということです。
予告編を見る限り、小説版のイメージと映画はかなり近いもののようですが、キャラクターの違いも少しあるようで、その辺は劇場で、また楽しん下さい。