伊坂幸太郎著『シーソーモンスター』を読む

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伊坂幸太郎著『シーソーモンスター』をようやく読みました。

3つの条件を設定した上での、8作家による小説の競作、「螺旋(らせん)」プロジェクトとして、「小説BOC」1~10号(2016年4月から2018年7月)の間に連載された作品。


3つの条件とは、

1.「海族」と「山族」、2つの種族の対立構造を描く、
2.全ての作品に同じ「隠れキャラクター」を登場させる
3.任意で登場させられる共通アイテムが複数ある

ということで、各作家が時代を分担して、独立した物語を書いていますが、この本の2作品では、時代的に、バブル時代の昭和後期と、近未来の設定の2作品になっています。以下ネタバレあり。

表題作の『シーソーモンスター』では、バブル時代が舞台。

嫁姑の争いと、医薬品会社の営業の接待で疲労する夫の、3者の視点で書かれる<衝突>。

「海族」と「山族」とぼ思しき嫁・姑の愚痴合戦と、営業先の医者のえげつない要求にくたびれる夫に、嫁・姑の過去の謎解きより、なにか哀愁に打たれるのは、わたしだけでしょうか。

『スピンモンスター』は、近未来の話。子供の頃に、車の自動運転を解除した親の手動操作により、お互いに交通事故で家族全員を失った、青年二人。

主人公は、未来の安全な情報伝達の手段、「手紙」の配達人。もうひとりは刑事。

主人公は、旧友の残した手紙と、協力者と共に、国家的な陰謀というか、未来を支配する影の力に挑むという・・・あまり語れないのが残念(結構言ってるかw)ですが、今日的話題を取り込んだ、ストーリーとなっています。

著者の作品に、度々出て来る、見えない「権力」に対する危機感を、織り込んだ物語。

両作品とも、登場人物の描写が作りこまれているので、性格や行動パターンまで想像できる、伊坂作品らしい、楽しめる作品です。

伊坂幸太郎 著 『シーソーモンスター』   [PR]
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発行:2019/04/05 出版社:中央公論新社 紙価格:1728円
ジャンル:ミステリー 形態:単行本