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伊集院静著「ノボさん 小説 正岡子規と夏目漱石」を読む

伊集院静著「ノボさん 小説 正岡子規と夏目漱石」を読みました。

正岡子規というと、司馬遼太郎原作でNHKのドラマにもなった「坂の上の雲」での香川正照の壮絶な演技を思いだしますが、この本では、表題の通り、正岡子規と夏目漱石の交流と共に、野球にも親しんだ子規の伸びやかな青春時代と、壮絶な闘病と共にあった晩年(といっても享年34歳ですが)を描きます。

著者が「小説」として生き生きと描いているのは、子規の「初恋」の話や、後に東京帝国大学国文科でただふたりの同期生だった、二人の交友部分。

秀才だが気難しい漱石と、人を引きつける力のあるが気まぐれな子規が落語を通じて友人となり、漱石が松山に赴任したときは、一時ふたりで同居までするほど親しかったとは知りませんでしたが、そこでの漱石の気持ちなどを代弁しています。

結核やカリエスに苦しむ子規と、英国留学でこころを病んだ漱石。明治の二大文豪が、明治維新後の文化の息吹のなかで、苦しみもだえながらも自分達の表現を開拓していったのですね。

また、子規が中国に従軍記者として渡った際には森鴎外と知己を得て、つながっていきますし、病床からは多数の弟子の指導をしたりするわけですから、その交友の広さとバイタリティーには驚くばかりです。

そして、著者得意の青春小説のリズムと、松山弁の柔らかさが、壮絶な闘病をも柔らかく包んで、悲惨な感じがしないのが不思議です。

それにしても、親戚から借金しまくりで、いくら侍の出とはいっても、母と妹が一家の当主だからと、逆らずに献身的に看病する様は、現代では理解できないあり様で、子規の人生とその文学を、文字通り支えていたと、感動を覚えました。

伊集院静 著 『ノボさん 小説 正岡子規と夏目漱石』   [PR]
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電子書籍:      
発行:2013/11/22 出版社:講談社 紙価格:1785円
ジャンル:青春 形態:単行本