伊集院静著「東京クルージング」を読みました。
著者が尊敬するバッター、松井秀喜が実名で登場し、著者の分身と思われる作家と、松井氏の特番を作るTV局のディレクターの野球話かと思いきや、後半、まったく異なるテイストの、生々しい女性の人生ドラマに変わります。
前半では、松井氏の人となりを絶賛し合い、主人公であるディレクターの青春時代の甘酸っぱい話が、酒のつまみ程度に描かかれるのか、と思っていたら、後半は全く違う物語に。
学生時代に、彼の前から姿を消した女性の、凄まじいまでの人生模様が描かれます。
最近は、あまり過激な表現のある作品は書いていない著者ですが、これは若い頃の作品のようにパッションに溢れています。
これ以上書くとネタバレになり、ミステリーの要素のある作品なので、控えますが(もう書いてるけど)w、地方と、その濃密な人間関係、暴力と性が荒々しく描かれています。
タフに生きる女と、待ち続ける純な男。古典的な男女のラブストリーとは、真逆の男女。しかし、運命は・・・。
無宗教だという著者も、最後は、宗教的な事を言わざるをえないような展開になります。
最後まで読んではじめて、最初のやや甘いトーンの野球話にも、意味があったのだと、得心できる物語でした。ただ、「東京クルージング」というタイトルは、内容と違い過ぎる気がます。