熊谷達也著「ティーンズ・エッジ・ロックンロール」を読みました。
作者の作品ではおなじみの、気仙沼市がモデルというの「仙河海(せんがうみ)」市の高校生ロックバンドのリーダー、匠は、仲間が抜けてのバンドの解散で、やむなく学校の軽音楽部に入部。
そこで、不思議な魅力を持つ先輩女子部長、遥と出会います。そして、自分の将来、やりたいことを探している内に、音楽にまつわるある企画を思いつき、何か影を持つ遥と共に、大人も巻き込んで、成功させようとしますが・・・
という、まさに、バンド、挫折、出会い、恋、生き方探しと、青春小説要素が詰まった作品と言ってしまいましょうか。
読んでいて、こっ恥ずかしくなるくらい、明るい小説で、「青春してるなー」「音楽仲間っていいな」と、どんどん読み進めたくなる話です。皮肉ではありません。
ちょっと元気が無い方、バンド経験のある方に、特におすすめです。
とりわけ、後半のクライマックスの盛り上げ方は、著者の真骨頂。自分が高校生に戻ったような気分で、ページを、高速でめくりたくなるでしょう。
ちなみに、著者の仙河海市を舞台にした作品には、他にやや教育問題も含んだ暗いトーンの「リアスの子」や大人の恋愛を描いた「微睡の海」があり、いずれも東日本大震災をからめていますが、できれば、本作は、あえて震災にからめず、一般的な青春小説で終わらせても良かったのでは、と個人的には思います。
もっとも、著者には、そこが執筆動機で、はずせない所なのでしょう。
ま、とにかく元気が出る小説で、中高生から、昔の高校生まで広く楽しめると思います。
初出は「月刊ジェイ・ノベル」2014年4月号から2015年2月号。