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熊谷達也著「揺らぐ街」を読む

熊谷達也著「揺らぐ街」を読みました。

東日本大震災を、東京からの視点で描いた作品で、著者一連の「仙河海市もの」のひとつ、スピンオフとも捉えられますが、震災そのものというより、出版業界全体に対する主張を小説にした、すこし毛色の違う作品となっています。

以下ネタバレあり。


阪神淡路大震災の被災者である、若手の女性編集者が主人公。

東京で仲のいい女流小説家と東日本大震災を経験。震災にショックを受けた小説家が書けなくなると、二人で、被災地の仙河海市(気仙沼がモデル)に取材に向かう。

震災を題材に、編集者をモデルに作品を書くつもりだという小説家。現地では、編集者の元彼との再会があったり、行方不明だった元小説家を探し出したり・・・

とまあ、仙河海市シリーズの作品ではあるのでしょうが、だんだん出版業界のあれこれ、編集者と作家の関係、文学賞、そして震災に対する現地、外の小説家の姿勢を、やんわりと批判する内容が主となっていきます。

大きな被害が目立たない仙台(実は結構ありますよ)に住む著者としては、「震災文学」を、たとえ被災していたり、現地にいてもいなくても、書けるはずだ、いや、各自、自分流に書くべきだ、出版界もそれを工夫して、売れるようにすべきだ、という主張があるようです。

ということで、「揺らぐ街」というタイトルですが、「作家と出版界」という、内幕物めいた内容が主となっており、こんなの書いちゃっていいの、という気がする一方、外野としては、たいへん興味深く読みました。

熊谷達也 著 『揺らぐ街』   [PR]
本購入:amazon 楽天ブックス 紀伊國屋 セブンネット Honya Clubicon 
電子書籍:      
発行:2016/8/17 出版社:光文社 紙価格:1728円
ジャンル:純文学 形態:単行本