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三浦明博著「五郎丸の生涯」を読む

三浦明博著「五郎丸の生涯」を読みました。犬を飼う様々な人々の暮らしと生き方を描きながら、最後には著者の強いメッセージを感じる、ミステリーを越えた良書です。

大型の秋田犬が、ふらりと仙台市郊外の老人にやってきて、静かに息を引き取りました。ひとり暮らしの老人は「ある事」を実行しようといたのですが、その前に「野良犬」のようなその犬を火葬場に運んで、葬ってやることにしました・・・

そこから、その犬が関わった、いくつかの家族の話が独立した短編のように紡がれていきます。

果たして、その犬、「五郎丸」は、どこで生まれ、どのように育ち、そして人間たちと関わったのか。以下ネタバレあります。

「五郎丸」は、様々な事情で、多くの家族、個人に飼われます。ある時はばらばらになりかけた家族をつなぐ「家族」のようでもあり、子供を育てる親にもなり、人間の都合で簡単に捨てられ、エゴを映し出す鏡であり、本当の自分に気づかせてくれる友人でもあり、命の尊さを感じさせてくれる神のようでもある。

五郎丸は様々な人々に影響を与えながら、静かに人々を見つめ、去っていきます。

そして最後のシーン。この老人だけは犬を飼ったのではなく、最後の「葬式」をしただけでした。しかし、その出会いが運命を変える。あの忌まわしい災害でさえ、意味を変える。ここだけは、ミステリー作のようでもあります。

五郎丸とのかかわりと通して、家族のあり様、ひとの生き様、そして生き方へのメッセージまで含みながら、大上段に構えることなく、淡々とシーンが描かれ、素直に読めます。

犬好きの方、そして被災地の方にも是非読んでいただきたい。最後には、ほっとできる小説です。

三浦明博 著 『五郎丸の生涯』   [PR]
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発行:2012/07/18 出版社:講談社 紙価格:1575円
ジャンル:ミステリー 形態:単行本