佐藤厚志著、『常盤団地の魔人』を読みました。「芥川賞受賞後第一作」として新潮社からの発売ですが、2023年1月から7月まで河北新報に連載された新聞小説、「常盤団地第三号棟」を改題、加筆修正した作品です。
今野蓮は喘息持ちの小学生。三年生にあがると友だちができ、やがて悪ガキ軍団に組み込まれていく。宿敵・管理人との対決、雑木林のひょうたん池の謎、捨て犬失踪事件、テレビゲーム禁止令……。誰もが経験した小さな冒険を経て、気弱な少年は成長していく。『荒地の家族』で芥川賞を受賞した期待の新鋭による受賞後第一作。
新聞で、週一掲載開始になった時、何回かは読んだのですが、序盤の展開から少年冒険譚な展開かなと、なかなか、その世界に入れなかったのですが、単行本でまとめて読んでみると、流れが整理されて、すーと物語に引き込まれていきました。
これは、少年の成長物語のひとつには違いないのですが、恐らく、タイトルから連想されるであろう読者の予想を、大きく覆す読後感となるでしょう。
というか、私は、予想とは違って、非常に面白く読みました。
いつも兄にイジメられている、喘息持ちの主人公、非力な小3の蓮が見た、「魔人」とは何か。
支援学級から普通学級に移った主人公が、新しいトモダチ、仲間の中で、認められるべく、信頼しあったり、ケンカしたり、共同作業を通じて、輪に入っていくのですが、そこには「魔人」が。
ミステリーでも、少年冒険譚でもない、意外な結末が待っています。
「常盤団地」の小学生たちの、子供の間の支配関係、いじめ、はたまた、友情や子供らしい共同作業。
子供たちと、団地に住む、誰もが、疲れ果てたり、イライラしてる大人達との、様々な関わりの中で、「事件」が起き、蓮が成長を遂げますが、そのためには魔人の正体を知ること必要だった。
大人になる、成長とは何なのか。
これまでの著者の作品とは違う、テイストの作品かもしれません。
書籍、電子書籍共、各プラットフォームで購入可能です。