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瀬名秀明著「大空のドロテ」シリーズ(I・II・III)を読む

昨年末から一挙に出版され完結した、瀬名秀明著「大空のドロテ」シリーズを読みました。

モリース・ルブラン「ルパン・シリーズ」を踏まえて、アルセーヌ・ルパンは、一体誰なのか?サーカスの綱割りの12歳の少女ドロテは、ルパンの娘なのか?そして狙われている「財宝」とは?

10年前に雑誌に発表され、長らく中断していたものを補筆して、一気に完結させたとのことです。以下ネタバレあり。



IIIでは、ドロテとその仲間ジャンが、ドロテの持つ秘密のコインに迫ってくる、謎の男達と戦うという、少年冒険活劇風。逃走、追撃に飛行シーンもあって、手に汗握る展開です。

挿絵のイメージもありますが、宮崎アニメのヒロインを彷彿とさせる、勇気ある少女とそれについていく少年の成長物語のように思えてきます。

それがIIIになると、コインの謎やルパンが誰かということより、第一次世界大戦後のヨーロッパの政治情勢や、国家間の話もからんできて、大きな話になってきます。

その中で、二人は12歳ながら、兵士のように活躍したりするので、様相が変わってきます。この辺の流れをどう感じるかですね。

この物語をしっかりと味合うには、少なくともルブランを相当読んでいないといけないし、実在する小説家もちらほら登場してくるので、そちらの知識があるとないとでは、全然違うでしょう。

その意味で、児童文学のルパンしか知らない当方には、全容を語る力はありません。

また、この小説のためにパイロット免許を取得し、自らアフリカ、ヨーロッパを縦断飛行までした著者の、様々な飛行操縦や空や砂漠の描写など、いずれかを体験していないと、本当のところを味合うのは難しいかもしれません。

それでも、ドロテやジャンと一緒になって、フランスからアフリカ西海岸まで、自ら操縦して飛んでゆく浮遊感や「リアルな」スケール感が、とても清清しい。

身辺ドロドロ系の世界を描く事の多い昨今の小説の中で、稀有な作品ではないでしょうか。

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発行:2012/12/19 出版社:双葉社 紙価格:1470円
ジャンル:ミステリー 形態:単行本