瀬名秀明著「月と太陽」を読みました。
2011年から2013年までに「小説新潮」「小説現代」他に発表された5編の短編小説集。
飛行教官と小説家のパイロットの飛行訓練風景を詳細に描きながら、「飛ぶ」心情を浮かび上がらせる私小説風の「ホリディズ」、機能停止して地球を周回している大学製の小型衛星の「奇跡」と、その利用の夢をつなぐ「真夜中の通過(ミッドナイト・パス)」、タイムマシンや未来との通信?を題材にした「未来からの声」、
結合双生児、一卵性双生児と18年ごとに訪れる皆既日食をからめて、意識と身体の問題を問う「絆」、テレパシー装置と、ネット上に放たれた個人情報などのビックデータ、エージェントプログラムなどから、「個性」を考える「瞬きよりも速く」など、多彩な作品を収録しています。
各作品には東日本大震災がトピックとして出てきたり、科学に対する失望に対する反論、そして著者のライフワークともいえる、身体と意識の問題などが、時間軸を複雑に折りながら展開されています。
瀬名ワールドに慣れていないと、人称代名詞の転換に、ついていけなくなりそうですが、じっくりと読み解きをすれば、じわじわと面白くなるのではないでしょうか。
科学的なタームについは、分かりやすく説明してあるので、文系の私でもなんとかついていけました。