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瀬名秀明ほか著『知の統合は可能か パンデミックに突きつけられた問い』発売

瀬名秀明、渡辺政隆、押谷仁、小坂健ほか著『知の統合は可能か パンデミックに突きつけられた問い』が、発売になりました。御恵贈頂きまして、早速読みました。

パンデミックについて、従来から専門家と共著を出している瀬名秀明氏を中心に、今回の新型コロナウィルスの教訓を、将来に向けて活かすための根本となる考え方を、どうやって醸成していくかの提言で、専門家のみならず、一般の人にも役立つ資料、読書案内となっています。

タイトルは、難しそうに見えますが、理系・人文系問わず幅広い分野の専門家との分かり易い対談が中心で、読みやすく、ページ下の注釈や、用語集、参考文献が丁寧に付けられて、専門家以外の人も、詳細を知るのに使える構成になっています。


本の内容としては、各分野の研究者が揃っている東北大学において、今回の新型コロナウイルスCOVID-19対策に直接、携わった研究者・医療現場の指揮官はじめ、人文系を含む様々な分野の研究者たちの、幅広い視点からの総括・見方を、瀬名秀明氏がインタビュー形式で聞きだし、サイエンスライターの渡辺政隆氏が執筆。

最後に、まとめとして、瀬名秀明氏が、さまざま「知」や、異なる意見に対峙する時の、専門家同士、専門家と一般の人、あるいは一般に人同士が、意見を交わす時にもつべき、スタンス、態度について、提言を書いています。

インタビュー相手の研究者と時期は、下記の通り。尚、インタビュー時期が長期にわたり、その時点での統計数字が語られている事に留意。

  • 第一章 〝お役所仕事〟の新型コロナ対策の現場 ×小坂健(公衆衛生学) 2020年9月10日
  • 第二章 人はなぜ攻撃的になるのか ×大渕憲(社会心理学) 2020年10月30日
  • 第三章 専門家の枠を打ち破る〈総合知〉 ×野家啓一(科学哲学) 2020年12月11日
  • 第四章 災害医療と地域パンデミック対応 ×石井正(災害医療) 2021年2月17日
  • 第五章 人と寄り添う──宗教人類学からのアプローチ ×木村敏明(宗教人類学) 2021年4月22日
  • 第六章 地方自治とパンデミック──地方行政に託される課題 ×飯島淳子(行政法) 2021年7月9日
  • 第七章 専門家が果たすべき役割とは──「専門知」の活かし方 ×本堂毅(物理学・科学技術社会論) 2021年10月8日
  • 第八章 COVID-19の特異性を理解してこそ ×押谷仁(ウイルス感染学) 2022年3月8日
  • 第九章 いまこそ〈総合知〉を──COVID-19は転換点 ×押谷仁 2022年3月10日
  • 第十章 〈総合知〉に何ができるのか①──いままでを振り返って 瀬名秀明×渡辺政隆 2022年4月22日
  • 第十一章 〈総合知〉に何ができるのか②──科学なしでも科学だけでも 瀬名秀明×渡辺政隆 2022年4月27日
  • 第十二章 〈総合知〉に何ができるのか③──知の統合をめざして 瀬名秀明×渡辺政隆
  • 第十三章 SDGS-IDセミナー 2022年9月30日 押谷仁・小坂健
  • 第十四章 総合知と全体知の新たな「連帯」に向けて 瀬名 2022年12月23日

世界中、日本中で流行し、莫大な死者と治療が必要な感染者が出てしまう「パンデミック」では、個人だけでなく、「社会的な病気」(私の語)として、感染の有無にかかわらず、家庭、職場、学校、地域社会から国全体まで、重大な影響が出てしまいます。

しかも、COVID-19で終わりならいいのですが、どんどん変化し、無症状でも感染をひろげるウイルスが登場、人々が世界中を往来する現代では、再びパンデミックが起こる可能性も予想されるとの事です。

今回のCOVID-19のように、病気の全貌も分からず、治療法開発に時間がかかる中で、社会としてどう対応していくかは、直接の研究者、治療現場だけでは、対応できない、決め切れない事がある。

未知のものに対処するとき、何を優先していくか、どう決めて行くかの選択肢を提示できるように、直接的な専門家だけでなく、幅広い分野の専門家の「総合知」を、平時から統合できる環境を作っておく必要がある。

そして、最終的には、選挙で選ばれた政治家の決断となるわけですが、それを選ぶのは国民。

だから、一般のわたしたち自身も、政治家・政策を選択するための手がかり、考え方を、予め持っていくべきだ、そのために必要な原則を提言し、資料を提供しようとする本のように思います。

さらに、この本の最後で強調されている点として、総合知を目指す上での大きな課題が上げられています。

それは、専門家、非専門家、有名・無名問わず、まずは謙虚に人の話や理論に耳を傾けるという、前段の「科学的姿勢」に乏しく、また、一般の人は、マスコミの演出やSNSのバズりだけで、安易に決めつける弊害も出て、建設的な議論に進まない事。

この点を、瀬名、渡辺氏は、大変危惧しているようです。

私も、COVID-19が、病気だけでなく、英知を結集するどころか、社会の分断を加速させている気がしています。

ではどうすればいいのか。

本書には、そのヒントが書かれています。

自分的な興味としては、加えて、厚労省官僚や政治家本人の政策決定の経緯なども知りたいところです。
彼らにも言い分はあるでしょう。が、現役の間は無理でしょうし、それはまた、別のライターの仕事でしょう。
 

本書は、現在のところ紙本のみの発売ですが、電子書籍も発売予定とのことです。
瀬名氏の労作、膨大な書籍リストは、紙本には掲載されていませんが、巻末のURL又はQRコードから、ダウンロード可能です。PDFで91ページ、2.6MB。(3月19日確認)。

尚、電子書籍の方には、リストも付属しているとのこと。

(3/14追記)4月22日(土)紀伊國屋書店新宿本店3Fで、瀬名秀明、渡辺政隆氏による無料トークイベントあり。着席は事前申込要。

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電子書籍:      
発行:2023/03/13 出版社:時事通信社 紙価格:3,080円
ジャンル:ノンフィクション 形態:単行本