今年出版された、佐伯一麦著「光の闇」、「還れぬ家」がKindle電子書籍で発売されています。
純文学系の「私小説」としては、早い電子書籍化ですね。なかなか文庫本になり難い場合は、早目にやっていただくとありがたいかも。
仙台在住小説家作品の図書室/伊坂幸太郎、伊集院静、熊谷達也、佐藤厚志、瀬名秀明、佐伯一麦、三浦明博
佐伯一麦著「光の闇」を読みました。
扶桑社の文芸雑誌「en-taxi」に5年に渡って発表されてきた、連作短編集。
「欠損感覚」というテーマの下に書かれた「鏡の話/水色の天井/髭の声/香魚/……奥新川。面白山高原。/空に刻む/光の闇/二十六夜待ち」の全八章。以下ネタバレあり。 “佐伯一麦著「光の闇」を読む” の続きを読む
佐伯一麦著「還れぬ家」を読みました。
年老いた認知症の父親の介護の手伝いを、実家の母親から頼まれるようになった、末っ子の小説家の「私」とその妻。
「私」自身も、鬱や喘息を患っており、実家に父親の様子を見にいくこともできない状況もしばしば。それで、妻が代わりにいくが、進行する父親の症状に、嫁である「妻」にもストレスの症状がでてきます。
さらに、実家で懸命に父の介護をしていた母は、自身が病気で短期入院すると、施設に入った父と会うの嫌がるようになります。ここに至って「私」も覚悟を決めるのですが・・・
さらに、主人公の家族、父、母、兄、姉との何とも言えない「距離」と確執。そして子供のころのトラウマ。
いくら私小説家といっても、ここまで書いていいのか、という位、家族の間の、微妙な影をとことん書いています。多少はフィクションでないと、ヤバイのでは思ってしまいます。
認知症の介護、親との同居・不同居、看取り、親世代の「世間体」や価値観への反発、兄弟間のすれ違い、核家族など、一定の年代の方には、ひとごとでない話が詰まっています。
ただ、著者独特の文体によって、先の朝ドラのように、ただただ視聴者に緊張感を強いて、見るも嫌になるような話にならず、どこか、光が差しているように感じるのは私だけでしょうか。
4月24日佐伯一麦著「光の闇」が発売になります。
「私小説作家・佐伯一麦氏の連作短篇集。
アスベスト被害で著者自身のなかに、肉体的欠損感覚が存在している
そのことを緒にして、著者を思わせる主人公が、さまざまな肉体的欠陥を持ったひとびとの「欠損感覚」を探っていく物語。
視覚障害の夫婦、義足の女性、声帯を失った作家、嗅覚障害を患った寿司屋のおかみさん、盲学校の先生、聴覚障害者、そして記憶を失った板前の話……。」とのことです。
佐伯一麦著の随筆集「麦の冒険」が発売になっていました。
「デンマーク、ノルウェー、モンゴル、中国。あるいは生まれ育った広瀬川のほとりやその上流の山々を友と歩く…。仙台に暮らす作家・佐伯一麦が、訪れた土地の見聞に随って筆の趣くままに綴る。震災後に執筆した紀行文も収録」
とのことです。仙台の出版社荒蝦夷の発行。アマゾンで扱いが無いようです。 “佐伯一麦著「麦の冒険」発売中” の続きを読む
エッセー集や対談集は出ていたものの、ひさしく小説単行本が出ていなかった、佐伯一麦氏が2/28に「還れぬ家」を出版します。
若い頃親に反発し家を出た光二だが、認知症の父の介護に迫られる。そして東日本大震災が起こり……。著者の新境地をしめす傑作長編。
と、「ノルゲ」であった希望の光を、また吹き消されそうな展開になるのでしょうか。 “2/28佐伯一麦著「還れぬ家」発売” の続きを読む