熊谷達也著『孤立宇宙』を読みました。
これまで野生動物、猟師ものや、時代小説、仙台・宮城を舞台にした人間ドラマ、そして最近ではロードバイクをテーマした作品など、様々なジャンルを書いてきた著者ですが、ついに、元数学の先生らしく、SFの分野にも進出。
猟師から量子に飛びます。
いきなり464ページの長編。以下多少、ネタバレあり。
2つの小惑星の地球衝突が予想され、人類滅亡の危機にある100年以上先の未来の話。
精神と肉体の分離、人間とは何か、という根源な問いを秘めながら、滅亡の危機をどう超えていくかの冒険譚にもなっていて、一気にに読めます。
大きなテーマとしては、いかにして地球に残り、あるいは脱出して、生き残りを図るか、ということ。
地球に残り、巨大シェルターで自給自足でやり過ごす、他の居住可能な惑星に向けて一か八かの惑星間航行、そして何もせずに地球の激変を受けいれるという、3様の人々と主人公達を絡めていきます。
地球のシェルターに残った、警備要員のレン(蓮)が、他のシェルターから受けた救助信号を受けて、救出に向かい、その後のシェルター内で起こるの騒動と、宇宙に飛びだったはずのレンの元恋人との再会、そして、新たな挑戦という2部構成。
精神と肉体の分離、宇宙エレベーター、ナノマシン、惑星間航行、電脳空間、アバター、分身bot、メインコンピューターによる支配、ロボット3原則、量子テレポーテーションなど、SFの要素がふんだんに出てきます。
SF好きのうるさ方のような細かい検証できませんし、興味もありませんが、4人の男女の主人公グループが、いかにサバイバルに絡んでいくか、そのダイナミックな展開は、さすがのストーリー・テラーぶりで、楽しめました。
尚、第一部は、2022年7月に「小説現代」に発表されたものを加筆訂正、第2部は書下ろしとのことです。