瀬名秀明著「この青い空で君をつつもう」を読みました。著者、久々の単行本。
筆者によると、母校の静岡高校をモデルとした、ということで、同校関係者や静岡の人には、懐かしい、ぴんとくる背景が、散りばめられていると思われます。
また、本の帯にも「青春ラブストーリー」とのキャッチがついていますが、私は、少し違った感想を持ちました。
和紙店の娘の主人公は、入学した静岡の高校で、祖父に教えられた折り紙の縁で、折り紙が得意で、不思議な雰囲気を持つ彼と知り合います。
そこから、出会いと別れ、高校でのクラスや、美術部での共同作業を通して、「青春」を描いているのではありますが、同時に、折り紙に秘められた「謎」解きの様相が、後半になって急展開します。
若者たちの心情が、やや急ぎ気味に描かれるのに対し、折り紙の数学的な解説とか、別の科学的な「謎」については、詳細に描かれています。
折り紙好きの人、数学好きの人には、興味深く、おーっいう話が待っているといますが、高校生のラブなストーリーを期待した人には、どうでしょうか。
抽象化が苦手は私には、折り紙の解説が、なかなかついて行けないところではありましたが、静岡高校?の熱い行事の数々は、楽しそうで、興味深く読ませていただきました。
著者に体調不良からの回復と、主人公の女子高生の、新たな希望に向かっての歩みが、シンクロしていると期待したいです。
初出は「小説推理」2016年6月号から8月号。